1902年に発売されたとある本は、当時のイカサマギャンブルの実情を暴露する 衝撃的な本でした。著書はS.W.アードネス。この男がその後のカードマジックの歴史を作ります。
1902年、アメリカで『Artifice Ruse and Subterfuge at the Card Table』という名前の本が出版されます。 当時、まだまだ現代のようにカードマジックが普及していなかった時代。 その本は、ギャンブラーがカジノにおいてどのようなイカサマをしてカードをコントロールしているかを解説したものでした。
1905年、同著は『The Expert at the Card Table』と名前を変えて再販されます。
本の中には100を超える技法とイカサマ師がどのようにギャンブルで周りを欺いているか、その極意が記されています。
近代のマジックに多大な影響を与えたと言われ、「プロフェッサー」の異名でも知られるダイ・バーノンは この本を絶賛し、自ら解説本の出版もしていました。
実は著者が誰かというのは謎に包まれており、綴りを逆から読んだE.S.アンドリューズではないかというのが 最も有力な説です。 (S.W.Erdnase → E.S.Andrews)
そんな謎に包まれた賭博師をモデルにしてデザインされたデックが、このSWEデックです。 Ellusinistから発売されました。
前面
背面
ケースは元となった本『The Expert at the Card Table』の外観の緑色がモチーフになっており、
前面には同著の「ボトムディール」の章にかかれている挿絵が使われています。
(よく見ると、デックのボトムからカードを取っているのが見て取れます)
カードは基本となる52枚、そしてケースにも描かれていたボトムディールの挿絵が記載された Jokerのデュプリケイトが2枚。そしてEllusionistの広告カードとダブルバックカードが1枚です。
スペードのエースにはUSPC社の名前が印刷されており、また同著の引用がスペードのマークの中に書かれています。 絵札には、カラーリングは違えど先日紹介したハスラーデックと同じデザインが使われています。 Ellusionistのデックという雰囲気が出ていますね。
カードの裏面は、『The Expert at the Card Table』の本をそのままモチーフにしたようなデザイン。 天地が生まれないように、上下にタイトルが書かれています。
エンボス加工はバッチリ。インクの色が深緑な分、表面の凹凸がより鮮明に見やすくなっています。
写真はちょっとピンぼけしていますが(すみません)、 側面のザラつきは抑えられており、割とサラサラしています。
カードの薄さはBicycleとくらべて2枚多い。 髪の質の製なのかわかりませんが、気持ち軽く感じました。
総評としては以下の感じです。
※星はレベルが低いという意味ではありません。またこれらはすべて個人の見解です
今ではカードマジックの始祖のような扱いを受けている、S.W.アードネス。 彼がこの本を書かなければ、今のカードマジックの世界は違ったのかもしれません。
彼は『The Expert at the Card Table』の中でこの本を出版した理由を書いています。 ちなみにこれをお読みの皆様は、予想が付きますでしょうか?
彼は、
が最大の目標と述べています。彼がこの本を出版しようと思った時に、何かお金を得たい大きな理由があったのでしょうか。 今ではもう知る術はありません。
DVDやオンデマンドのレクチャー動画がメジャーになっている現在。 たまには昔の本を読みながら当時に思いを馳せつつ、マジックの練習をしてみるのも良いかもしれません。