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Interview

「いつ死んでも悔いのないように」Future Barデックの作者、本根康之さんへ製作の想いを聞く

「いつ死んでも悔いのないように」Future Barデックの作者、本根康之さんへ製作の想いを聞く

ゲームクリエイターとして本業をこなす傍ら、ご自身の創作活動も精力的にこなす本根康之さん。 そんな本根さんにデック製作の裏話を中心に、アーティストとしての活動など様々な質問にお答えいただきました!

この記事は前編になります。ぜひ、後編にも続きます

  • 前編:Bicycle OWLとFuture Barのコンセプトについて ※当記事
  • 後編:Future Barの制作秘話や苦労話、クリエイター活動について 記事

Overview

以前、当サイトで紹介したBicycle OWLBicycle Future Barのデックをデザインされた本根康之さん。その本根さんに、なんと今回!ありがたくもインタビューをさせていただくことが出来ました(本根さん本当にありがとうございます!

たくさんの質問に答えて頂いたおかげで、記事は大変ボリューミーに。そのため、前後編の2回に分けてお送りしたいと思います!

・前編:Bicycle OWLとFuture Barのコンセプトについて
・後編:Future Barの制作秘話や苦労話、クリエイター活動について

まずは前編からです。

本根康之 - アーティスト
本業はゲームクリエイター。 株式会社モノリスソフトの取締役。プライベートでは絵画を始め、木工作品の製作や楽器製作、曲を作ったりと多彩な才能を発揮。最近では、オリジナルのデックを製作。第1弾製作OWL、そして第2弾のFuture Bar、どちらも細部まで作り込まれた魅力的なカードデザインが評判。

公式サイト
http://honnesan.seesaa.net/


Bicycle OWLについて

ーーーこの度はインタビューにお答えいただき、誠にありがとうございます。それでは早速、よろしくおねがいします!

本根康之さん(以下、本根):こちらこそ、よろしくおねがいします。

ーーーではまず、本根さんが最初に製作された「Bicycle OWL」についてお伺いしたいと思います。

本根:はい、おねがいします!

ーーー私はこのデックを初めて見た時、非常に魅力を感じました。それが何かといいますと、猛禽類であるフクロウが持つ「可愛さ」そして「狡猾さや獰猛さ」「闇に生きる気高さ」のようなものが現れていると感じたからです。本根さんはフクロウに何か特別な思い入れなどがあるんでしょうか?

本根:フクロウといえば、ファンタジー物に欠かせない存在になってきている猛禽類というイメージがあると思ったんです。私は元々好きではあるのですが、フクロウに関して詳しくなったのはフクロウに縁のある豊島区に住むようになってからだと思います。

ーーーおお、なるほど!確かに豊島区は”区の鳥”としてフクロウが指定されていますよね! (参考)なるほど、そこがルーツだったんですね。

本根:はい、そうですね。独特の存在感、醸し出すほんのり不気味な佇まい、世界中に伝わる昔からの人との関わり等、魅力をあげればキリがありませんが、それでいて可愛らしいのが良いと思いました。

ーーーわかります!森の忍者、なんて呼ばれていたりもしますけど、あのなんとも言えない愛くるしさ!かっこよさと可愛さを兼ね備えた存在だと思います。

本根:はい(笑)フクロウ素敵ですよね。

ーーー今回のこのBicycle OWLなんですが、そんなフクロウたちを「モザイク調」といいますか、ステンドグラスのようなデザインになさったのは、何か意図がお有りなのでしょうか?

本根:もしフクロウをモチーフとして扱うと、どうしてもモノトーンで重暗くなりがちで、かといって多色使いにすると民芸品に寄ってしまうと思いました。なので、重厚さと品格、色彩のバランスを取る手法として、ステンドグラス風の表現に致しました。

ーーーそうだったのですね〜。確かにあのステンドグラスのデザインは非常に高貴なイメージを抱きました。しかし、あの描法は通常の絵とは違うような気もしていて、描く際に苦労などはされませんでしたでしょうか?

本根:ありがたいことに、仕事でもゲームのワールドマップ枠等で、様々な要素を纏めるのに、過去に描いた手法でした。なので、実は初めてというわけでもなかったんです(笑) ですので、狙い通りに仕上げられたのではないか・・・と思っています。

ーーーおお!確かに本根さんはゲームのグラフィックを過去に何度もご経験されていましたね。その本職のご経験が今回生きたということですね。ちなみに、私はこのBicycle OWLのJokerのデザインが非常に気に入っておりまして・・・笑。このデザインは、何かメッセージだったりとかが込められていたりするのでしょうか?

本根:絵札の方が古典的な宮廷カードを意識してデザインしている分、『ヒト』に近いので、ジョーカーは、逆にフクロウ本来のワイルドさ、ハンターの一面等を感じさせる札にしております。日本でもフクロウはペットとして飼われるようになってきていますよね。ですが本来彼らは夜行性で、鼠等を捕食する肉食の猛禽類なのを忘れないで欲しい、というメッセージもこめております。

ーーーJ・Q・Kが高貴な部分を表現している分、逆にJokerは彼らの野生の部分を全面に出したということですね。なるほど、確かにこう、眼光鋭く狙われている感覚をすごく感じるデザインだと思いました(カッコいいというのを伝えたかったがよくわからない表現になってしまった)Jokerの1枚が青、もう1枚が赤になっていますよね。それが夜中&黄昏のイメージかと想像しておりました。夜行性の彼らが活動を始める時間帯が表現されているのかな・・・と勝手に自己解釈してましたがあたってますでしょうか!?

本根:ふふふ(笑)お目が高い!・・・と言いたいのですが、 実は二色に分けたのは、そこまで深い意味はなかったんです、ごめんなさい!

ーーーはっ!これは失礼いたしました!

本根:いえいえ、そう解釈していただいても全然だいじょうぶです。ありがとうございます(笑)

ーーーありがとうございます・・・! では次にバックデザインについても少しお聞きしたいと思います。

本根:はい、お願いします

ーーーこのデックはバックデザインがフルカラーになっております。が、バックがフルカラーのデックというのは意外と少ないですよね。無粋な話で恐縮ですが、コストとの兼ね合いもあったかと思います。フルカラーにしようと思ったきっかけとかってあったりするのでしょうか?

本根:そうですね、まず先程も少し触れさせて頂いたのですが、絵札は「ヒトに近い重厚さや品格」をデザイン、Jokerは「ハンターとしてのワイルドさ」をデザインさせて頂きました。そしてバックデザインの方はですね、「森に潜むフクロウ」を図案化したかったんですね。

ーーーフクロウが持つ要素を様々な方向から表現されたんですね

本根:はい、まさにそうですね。色としては深い緑に幅をもたせたかったので、あのようなデザインにしております。

ーーー確かにフクロウと森を一緒に表現しようと思うと、単色ではなかなか難しいですよね。・・・あの、今お話したこのバックデザインもそうなのですが、絵札・Jokerに加えて今回数字のカードも1からご自身でデザインされてらっしゃいますよね?

本根:おっしゃるとおり、すべて1枚1枚デザインさせていただきました。

ーーーすべてのカードをデザインするとなると、非常に苦労もされたかと思います。ただ、だからこそ本根さんのこだわりと愛をとてもこのデックから私は感じます。

本根:ありがとうございます!気に入って頂けて嬉しい限りです。

ーーーいやもう、本当に素敵ですよ。この1枚1枚を全部ご自身でデザインされようと思われたきっかけみたいなものってあったりするのでしょうか?

本根:元々はフクロウ柄のデックが欲しくて探していたのですが、どれもしっくりこなくて。「こんなのが欲しいんだけどなぁ」と、自分で何枚か絵札を描いてみたら良い感じになってきたんです。なので 『知識の象徴』 としてのフクロウを意識して、勢いで製作してみたのが、このデックになります。数字札は、スペードのAをデザインした後、雰囲気もそれに合わせたくなり、結局全て描き起こしてしまいました。

ーーーなんと!ということは最初は本根さんの「あったらいいな」から始まり、それがいつしかどんどん形になっていった結果、デックが誕生した感じなのですね。

本根:そうですね、そのような形になります。思い立ったら、いつの間にか・・・ですね、お恥ずかしい。

ーーーそんなことないです!!いや、すごいです・・・!すごい行動力です!ただ、一方で実際に絵を書くのとトランプのデザインをするのはこう、異なる部分があると思うんですよね。例えば、絵札やバックデザインで言うと、上下対称のデザイン(天地がない)になってると思います。やっぱりそこの部分で、苦労された所などはあったりしたのでしょうか?

本根:そうですねー・・・(少し考えて)天地のあるバックデザインだと、私自身がなんとなくそのトランプ自身で遊び辛いと思いましたので、天地の無いデザインにする、というのは最初から決めていたんです。ただ・・・そうなるとですね、図案化はしやすいのですが、やっぱり壮大な風景等を入れ込むのはなかなかやり辛いというのを痛感いたしました。そこが天地の無いデザインの難しさではないのかなと、改めて思いましたね。

ーーーなるほどなるほど。最初からもう天地なしのデザインで行くというのは決定されていたのですね。でも確かに、実質カードの半分しかデザインができないですし、大きな画は採用しづらい部分があるかもしれませんね。でも個人的にはこの天地無しはマジックにも使えるので気に入っております!・・・多分勿体無いのでマジックには使わないかもしれませんが。

本根:マジックでも遊ぶ用でも、ディスプレイ用でも、お好きな用途に使っていただいて構いませんよ!様々な遊び方が出来るのも、トランプの魅力だと思います。

ーーーありがとうございます・・・! もしよろしければ、私の質問以外に本根さんしか知らない裏話的なものがあれば教えていただきたいのですが。なんでも構いません。苦労した話ですとか、実は隠された裏設定がデックにあったりですとか・・・(なんてざっくりとした質問だったんだと今になって反省)。

本根:苦労した話・・・。そうですね、ちょっと待ってくださいね。(考え中)・・・今回、せっかく作るなら品質の良いデックにしたいという思いがやっぱりありました。なので、ご存知の通り、Bicycleのカスタムで製作する事にしたのです。ただその際にBicycleのロゴデザインと、このデックの「個性」を合わせるのに、タックケースのデザインはかなり悩みました。例えば、スペードのAだと何のデックだか伝わりにくいんじゃないかと思ったのです。

ーーー確かに、Bicycleといえば中央にスペードのマーク!というイメージが強いですよね。せっかく作るんでしたら、本根さんの個性が前に出たほうが勿論良いでしょうし・・・。

本根:そこでいろいろ考えたのですが・・・。ロゴバランスが指名手配書っぽく見え、トランプで犯罪・・・で、思い出したのが、『不思議の国のアリス』・・・はご存知でしょうか?

ーーーあの有名なルイス・キャロルの作品ですよね?

本根:はい、まさにそうです。ハートの女王にタルト窃盗の疑いで裁判にかけられたハートのジャックがいたのおぼえてらっしゃいますか?あの絵札を入れてみたら密度感も程よく綺麗に纏ったので、枠の色等を調整し、タックケースデザインが出来上がりました。もし、今後V2を出す際はタックケースメインは別の絵札になる可能性もあるかも知れません。

ーーーおおおお!なるほど!そういうことだったんですね!いや確かに凛々しい顔つきですし、ケースのデザインとしては非常にカッコいいなとは思っていましたが。はぁ〜『不思議の国のアリス』からの引用だったとは・・・。これは1つお得な情報を聞くことが出来ました!ありがとうございます。きっとこの記事を読んでる方も「へぇー!」と驚かれてるんじゃないかと思いますよ!

本根:そう思っていただけると、非常にありがたいです(笑)

ーーー少なくとも私は今のお話、めちゃめちゃ聞けて良かったです!こう、インタビューだと一番最初にそういうお話を聞けるのでちょっと得した気分ですね。あ、あと!今V2を出すというのがお話で出たかと思うのですが、今もしかしてすでに計画中だったりするんでしょうか!?

本根:実はいくつかアイデアはございます。が、計画中なのでもう少しお待ちいただいても良いでしょうか。固まったら、またお知らせできると思います。

ーーーっなるほど!まあ、ここをあまり掘り下げるのは野暮というものですね!いやーBicycle OWLにまつわるお話たくさん聞けて良かったです!では、次は今話題のあのデックについてお聞きしたいと思います・・・!!

Bicycle Future Barについて

ーーーさて、では次はデックコレクターの間で話題になっている「Bicycle Future Bar」についてお聞きしたいと思います!!

本根:はい、おねがいします!

ーーー本当におしゃれなデックですよね。ケースもカードもポストカードも!デザインすべてが世界観を表現していて、すごく引き込まれます。

本根:ありがとうございます。そう言っていただけると本当に嬉しいです。

ーーー今回、このデックは未来の酒場がテーマになっているかと思うのですが、このデックは本根さんのいわゆる「宇宙船でお酒を飲むならこんなイメージが良い」という願望が具現化したものなのでしょうか?それとも、どちらかというと「もしかして未来はこうなってるのではないか?」という予知的な要素が大きいのでしょうか。

本根:私が生まれた1970年度は前年に人類が月面着陸を成功させて、大胆な未来予測をしていた、そんな時代になります。その頃の未来感というのは今とは少し違っていて。その「未来感の延長に2020年があったらどうなっていたんだろう?」というパラレルワールド的な予想をし、描き、デザインしたのが今回のデックになります。

ーーー月面着陸の当時、私もまだ生まれていなかったですが、アームストロングさんの「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」というあの言葉は印象的でした。当時はスペースコロニーなどがすぐにできるのではないか?とか、宇宙旅行がもっと一般的になるのではないか?など今よりずっと宇宙開発が我々にとって近かったんじゃないかと確かに思います。

本根:そうですよね。でも実際の2020年はその未来予想図とは大きく変わってしまいました。それと半世紀生きて来て推測出来る事の一つとして、人類は生活様式・ファッションは変われど、何百年も変わらず続いてきた、私も大好きな『酒』という趣向品との関わりは、今後も未来永劫変わらないだろうという思いも込めております。

ーーー確かに。お酒は本当に古来から飲まれていますし、種類の変化はあるものの、人とお酒の付き合いというのは確かに変わらない気がします。・・・そういえば、Jokerのお酒の飲みかたは、銀河鉄道から着想を得たとブログの方で書かれてらっしゃいましたよね。Kindleでコミックスを探したところ、おそらく以下の部分ではないかと思う部分があったのですが、合っておりますでしょうか?


引用元:松本零士著『銀河鉄道999』コミックス10巻より抜粋

本根:正解です。こちらお探しになったんですか?よくぞ見つけになられましたね!

ーーー本根さんのブログを読んで、元ネタを知りたい!と思い、Kindle(注:Amazonが提供している電子書籍サービス)で探しました(笑)。書かれていらっしゃったとおり、私もかなり衝撃的な飲み方だと思いました。このオマージュを採用しようと思った経緯や当時の衝撃をぜひお伺いしたいです!

本根:実は最初ジョーカーの絵はバーで酔い潰れた女性を描こうと思っておりました。と言いますとやっぱり、暗いですし面白みに欠けるのではないかとも思いました。今まで見た中で一番凄い飲み方って何だったか・・・と振り返った時に、メーテルのあの飲み方が頭をよぎったんです。それをオマージュとして描かせて頂きました。

ーーーおおお!そんなエピソードが。でもそれが結果的にはめちゃくちゃインパクトのあるJokerになってると私は思います!本根さんのお酒愛も、とても感じますね。すごく今更な話をしますけど、やっぱり本根さん、お酒がお好きなんですね。

本根:はい、そうですね、実は大好きです(笑)

ーーーこんな質問して良いのかわからないんですが、お好きなお酒とかよく飲まれるお酒ってどんなのがあるのですか?

本根:私は赤ワインが好きですが、ウィスキー、日本酒、ラムも良く飲みます。最近では泡盛も。夏場はキンキンに冷やした白ワインやビールも飲みますよ!あれは最高ですね。 酒器は口が薄い物が好みです。ウィスキーは、バーで好みを伝えて色々飲んで開拓するのが楽しいんですよね。

ーーーおおぉぉ!大人です!私はお酒が弱くて、全然飲めないんですよね。お酒を嗜む人を羨ましく思います。今バーで好みを伝えるっておっしゃってましたけど、よく飲みには行かれるんでしょうか? あ!でも今はコロナなのであまりお出かけも出来ないですよね?

本根:そうですね、残念ながら最近は難しくなってしまいました。でも元々はお店を開拓するのも、行きつけのバーに行くのも、宅飲みも、全部大好きです。妻と一緒に飲み歩くと、美味しかったツマミを覚えて再現してくれるので、宅飲みも充実しております。

ーーー素敵な奥さん!良いですね〜。今の話を聞くだけでご夫婦の中が凄く良いんだろうなというのを感じました。ふふふ、なんだかほっこりしてしまいました。・・・おっとすみません!ちょっと話が脱線してしまいましたね。ごめんなさい。

本根:はい(笑)

ーーー今回このデックを50歳の記念として作成されたとお聞きしましたが、それに至るきっかけというのは何かあったのでしょうか?

本根:Owl Bicycle 製作後、50歳記念に売れなくてもいいから自分の趣味全開のデックを作る計画を立てておりました。でも、ここまでゴージャスな仕様にしたのは、実はコロナ禍の影響が大きいんですよ。

ーーーと申しますと?

本根:このFuture Barは、Prism Bicycleを見て思い付いたデックなのです。代理店にホログラムエッジ仕様で製作頂けない相談してみたんです。そうしたら、見積りが物凄い額になってしまったんですね。 悩んでいたところに、『死ぬかもしれない』伝染病の出現・・・。もう、いつ死んでも悔いのないようにしようと思い立ちました。こうなったら「タックケース内の印刷追加」等、今まで日本からUSPCに依頼した前例の無い仕様をふんだんに盛り込んでみようと決意し、金銭面でも全身全霊で挑んでみました。 結果、全く悔いはありません。本当に制作して良かったと思っております。

ーーー後悔しないようにしようという思いが、デック製作を後押しされたんですね! すごいです。いやでも今の話を聞いて、確かに私も後悔しない生き方大事だなと思いました・・・。参考にさせていただきます(しみじみ)。その全身全霊で挑もうと思われた結果、今回もすべてのカードを細かくデザインされておられますよね。今おっしゃって頂いた、「悔いのないように」ということ以外にも、何か1枚1枚デザインされたこだわりなどはございますか?

本根:カスタムデックのスタイルというのは本当に様々だと思います。ですが、私の場合は、絵本に近い感覚で全てを描き起こし、デックを制作しております。恐縮ですが、これが1つのこだわりかなとも思っております。世界観、人生経験、手触り、実用性、など、私の生きてきた半世紀全てを詰め込んだ、紛うこと無き『悪魔の絵本(注;西洋での昔のカードの呼び名)』という形になっております。

ーーーっなるほど!!デック全体で本根さんの芸術性が表現されているわけですね。でも確かに、デックを眺めているとカード1枚1枚を見ていくたびにワクワクする気持ちに私はなりました。悪魔の絵本・・・勿論本根さんのデックからは邪悪さのようなものは感じないですが、人を引きつける魔力は確実に存在しているように感じます。

ーーーそんなすべてを詰め込まれたFuture Barなわけですが、私個人的に(レビュー記事でも触れたのですが)スペードのJの人物が非常に気に入っておりまして。絵札はジェンダーレスを意識して設計されたとブログでも書かれておられましたが、何か実際にモデルになられたキャラクターなどはいらっしゃるのでしょうか?

本根:絵札の人物に特定のモデルはいないのですが、髪型、服装は60年代後半から70年代初頭を匂わせております。それと、宮廷カードの図案にある、剣や斧、盾や花、羽根などの絵の要素は形を変えて、さりげなく描かせて頂いてます。

ーーー60年代〜70年代といいますと・・・読んだ知識しか知りませんが「ツィギーとミニスカート」とかはそれぐらいの時代になりますよね。あと私はビートルズが好きなんですけど、彼らが活躍したのもそこらへんでしょうか。あとは・・・「モッズ・ルック」とか。あ、あと、ヒッピーファッションもそうですかね!こうやって見るとたくさんのファッション文化が生まれた時代だったんですね。

本根:はい、実はそうなんです。そしてちょうどその時代というのが、宇宙開発に全人類が夢見ていた時代でした。私はその時代に幼少期を過ごしておりました。なので、宇宙開発に憧れるというよりは、自然にそうなるのではないかと私含め、皆さんが思っていたのではないかと思います。先程触れた月面着陸の話もその時代にあたります。私はちょうどその60年代後半から70年代にかけての「色使い」だったり、豊かな宇宙生活様式を想定した「スペースエイジ デザイン」というものが今でも大好きですね。・・・その後80年代のポストモダンの流行の酷さに、10代後半の私はガッカリすることもあったりしました。

ーーー本根さんがまさにその時思い描いておられた、宇宙開発の未来の姿がこのFuture Barに表現されているということですね。先程話しておられた「好きなものを全部詰め込んだ」の意味がさらに理解出来てきた気がします。

公式サイト
http://honnesan.seesaa.net/

つづく

インタビューはまだまだ続きますが、前編はここまで。 後編は、実際にデックを製作する際の裏話や本根さんのクリエイティブな活動に迫ります。

更新をお待ち下さいませ!