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Interview

「グッズでは無く、トランプが作品のメインへ」今後の活動を本根康之さんに訊く

「グッズでは無く、トランプが作品のメインへ」今後の活動を本根康之さんに訊く

本根康之さんのインタビュー記事、後編を届けします! 前回の記事では、デックのデザインやコンセプトを中心にお話を伺いましたが、今回は実際のデック製作の裏話をお聞きしたいと思います。

この記事は後編になります。ぜひ、前編をお読みになってから、ご覧くださいませ!

  • 前編:Bicycle OWLとFuture Barのコンセプトについて 記事
  • 後編:Future Barの制作秘話や苦労話、クリエイター活動について ※当記事

Overview

Bicycle OWLやBicycle Future Barを製作されている、アーティストの本根康之さん。 その本根さんへのインタビュー記事後編!

前編では、製作されたデックのコンセプトを中心にお話をお伺いしましたが、後編では実際に製作に入られてからの苦労話を中心にお伺い致しました。後半もボリューミーになっておりますので、ぜひ御覧くださいませ!

本根康之 - アーティスト
本業はゲームクリエイター。 株式会社モノリスソフトの取締役。プライベートでは絵画を始め、木工作品の製作や楽器製作、曲を作ったりと多彩な才能を発揮。最近では、オリジナルのデックを製作。第1弾製作OWL、そして第2弾のFuture Bar、どちらも細部まで作り込まれた魅力的なカードデザインが評判。

公式サイト
http://honnesan.seesaa.net/


製作工程について

ーーーそれでは、次に実際にトランプを制作する段階に入られてからのお話をお伺いしていきたいと思っています。実際にFuture Barのトランプを製作する段階に入って、色々ご苦労されたこともあるかと思うのですが、可能な範囲でいいのでお聞きしても良いでしょうか?例えば、「当初想定していたのと違うイメージが返ってきた」とか「USPCからNGが出た部分があった」・・・ですとか

本根康之さん(以下、本根):そうですね・・・デザインに関しては、誰に横槍を入れられる事もなく、自分自身で好き勝手にやっているので、全くストレス無く完成までマイペースに作業することが出来ました。勿論、自分ひとりでやる分毎度大変ではありますが(笑)

ーーーそうですよね、企業で作られるとなると分業もできるとは思いますが、本根さんの場合は個人で製作されている分、全部お一人でおこなっておられるわけですし。

本根:はい。その分、自由にできるところはメリットかなとも思います。ただ、実際のUSPCとのやり取りは間に代理店にマツイ・ゲーミング・マシン様に入っていただきました。マツイゲーミングマシン様には本当にお世話になりました。自分で言うのも変かもしれませんが、こんな面倒くさい仕様だったのにコロナ禍の中、USPCと色々と調整していただきました。本当に、大変感謝しております。

ーーーマツイ・ゲーミング・マシンさん!日本では有名なトイメーカーですね。たしか、BicycleとBeeにおける日本の代理店業もされておられましたよね。

本根:そうですね!まさにその関係でお世話になりました。カスタムBicycleとなりますと、日本からの発注には細かな制限は確かにありますし、コストも勿論かかりました。ただ、その中で限界までカスタムしたデックになったかと思います。 代理店の方には日本からの注文でここまでこだわった仕様は初めてだと伺いました。対応して下さった、USPCにも本当に感謝しております。実はどうやら、USPCのカスタムBicycle担当に物凄く厳しい女性の方が居られるそうで。以前、その方がOwl Bicycleを見て珍しくベタ褒めして、ノリノリで制作して下さったのを聞いて嬉しかったです。納品時のダンボールラベルにも『Cool Owl!』と書かれていました。

ーーーおおおお!すごい!USPCのお墨付きも頂いたということですね!でもそういう言葉頂くと嬉しいですよね。

本根:嬉しかったですね。今回のFuture Barでも無茶で面倒な仕様が通ったのは、もしかしたら前作のやり取りがあったおかげかも知れません。

ーーーいやきっと間違いないと思います!いや、私はUSPCの人間ではないですが(笑)あのデザインがきたらきっと「おお、あのクールなフクロウのデザインの人だ!」って絶対なると思いますよ!

本根:そうなってくれてると信じたいですね(笑) デザイン入稿後に届くハードプルーフ(=印刷物の校正を刷った、全てのカードが1枚に印刷されたシート)をチェックした時も特に修正事項もなく、そのままスムーズに進みました。良かったです。

ーーーあ、そうだったんですね!一回印刷が上がってからが、結構色味の調整などでやり取りが発生するものだと勝手に想像しておりました。特に、バックのあの絵はフルカラーということもあり、鮮やかな発色をされていることからもそうなのかなと。

本根:そうですね、良く聞かれるバック絵ですが、宇宙に浮かぶ居住区で、皆それぞれのバーで、お酒を飲みハッピーになって華やいでいるのを図案化しています。特に今回はそのバックの絵が色の微妙な階調が印刷に出るか心配でした。しかし、綺麗に調整していただけたみたいです。大変助かりました。

ーーーなるほど・・・。1回目と2回目ではそれぞれまた違った苦労と、逆にスムーズに行ったところもあったというところでしょうか。少し無粋な質問になってしまうかもしれないのですが、2回目でスムーズに行く部分があったとはいえ、やはり本業(=モノリスソフト)もお忙しい中トランプの製作をされてこられたかと思います。普段、だいたいどれぐらいのお時間をかけて取り組んでこられたのでしょうか?

本根:「毎日何分する」と時間を決めて作業していたわけではなく、家で気が向いた時に好きに作業していました。深夜、お風呂に入ってから就寝までの1時間くらいが一番集中出来た時間だったのではないかと思います。その時にデザインを何枚か描き、描いては全体を見直す・・・という作業を繰り返して実施しておりました。なので、デザインの見た目よりは作業時間はずっと長かったかと思います。

ーーー試行錯誤しながら、ご自身のご納得行くものを探していったという感じでしょうか。いやでも、本当にこのFuture Barデックは素敵なデザインなので、きっと相当なお時間をかけて描かれたのだろうなというのはめちゃくちゃ伝わってきます!

本根:そう思って頂けたら大変ありがたいです。

ーーーもう本当にこのデック大事にさせていただきます!こちらこそありがとうございます!

クリエイターとして

ーーーOWL・Future Barとお話、本当にたくさんお聞かせいただいたのですが、私ちょっと気になっていることがございましてですね。これだけ大変な思いをされて製作されたということもあって、「やっぱりしばらくはデック製作はお休みされるのかな?」という思いと、「いや、実はもう本根さんは次回作をもしかして構想しておられるのではないか!?」という2つの勝手な思いがありまして。これはどちらかというと、一人のファンとして「次回作を期待してしまっている」だけなのですが・・・。

本根:ありがとうございます(笑) ご期待通りかどうかはわからないですが、現在すでにマイペースに4種類ほど描き進めているデックがあります。もしかすると、今年の秋くらいに次回作が出るかもしれません。

ーーーな、なんと!これは全国の本根さんデックファンのためにも、絶対に記事に載せないといけないですね(載せました!) ちなみにデック以外にも、絵を描かれたりですとか様々な活動を今も並行してされておられると思います。今、その中で新たにチャレンジしようとしておられたり、予定がある活動などはございますでしょうか?もし、よければ参考までにお伺いしたいです

本根:創作活動についてはデック制作をメインに、その世界観や設定を活かした物を作る感じになるのではないかと思っております。何かの作品のグッズの一つとしてのトランプ では無く、デックが作品のメインってありそうで無かったのではないか、と思っておりまして。

ーーーおおお、ということはBicycle OWLのグッズや、Future Barのグッズが将来展開されるかもしれないということでしょうか!?

本根あくまでデックが作品本体で、世界観を深めたり、認知度を上げるための作品になると思います。今回のFuture Barデックでも、宇宙船搭乗チケット風のポチ袋や、ギターピックを実験的に制作しています。

ーーーこれはかなり期待してしまいます。いや、プレッシャーをかけているわけではないのですが・・・・。すみません、でも楽しみにしております!そういえば、先日Twitterでもお見かけしましたが、ゲームマーケットに出典なさっておられましたよね?

本根:はい、ちょうど先日の土曜日と日曜ですね。ゲームマーケットとデザインフェスタには、2019年秋から参加させていただいております。マジックマーケットも前回の開催のときから参加しております。

ーーーコロナで大変な中かとは思いますが、本根さんのデックが多くの人に届けばいいなと私も応援しております!

デックコレクターとして

ーーー最後にですね・・・これはもう完全に私の趣味の範囲で大変恐縮なのですが、このサイトが「デックレビュー」をメインに扱っているというところと、本根さんが実にたくさんのデックをお持ち(先日のTwitterの投稿で600以上のデックをお持ちということが判明!)というところでお聞きしたいところがありまして・・・。

本根:はい、何でしょうか?

ーーー少しばかり、デックコレクター・デックファンとしての本根さんに対しても、ご質問させていただいてもよろしかったでしょうか?

本根:全然構いませんよ(笑) そうですね、私もデック集めるの好きですね。

ーーーFuture BarのきっかけにもなったBicycle Prism Gildedというデックですが、あのデックと出会った時のエピソードをお伺いしてもよろしいでしょうか?

本根:Prism Bicycleは最初ネットで拝見致しました。正直、見た時にかなり衝撃を受けました。以前から、ゴールドやシルバーのエッジ加工されたトランプというのは、良く見かけておりました。しかしなんと、ホログラム箔加工をカードでやってしまうのは驚きでした。勿論、手に入れた時の嬉しさも格別でした。7千円くらいの高額デックでしたが(笑)

ーーーはっ!あのデックってそんなに高かったのですね!でもBicycle Future Bar のHolographic Gilded版のことを思うと、やはりあのような特殊な加工はお値段がどうしてもかかってしまうのでしょうね。

本根:そうですね、こればかりはしょうがないものなのかと思っております。

ーーー今ちょうど過去に衝撃を受けたデックのお話をしていただきましたが、逆に今、気になっているデックとかってあったりしますでしょうか?

本根:Kings Wild Project のシリーズになりますでしょうか。

ーーーあの奇抜なデザインのデックシリーズですね・・・!自分はPostage Paidだけ持っております。色々なモチーフ・デザインに富んでいて、おしゃれでエレガントなデザインで、少しファニーさもあって素敵ですよね。

本根:はい、奇想天外な発想のデックには毎度驚かされますよね

ーーーそういえば、奇想天外で思ったのですが、本根さんは”実際に叶うかは一旦おいておいて”コラボしてみたいブランドなどはございますか?

本根:コラボとなると、本業を引退後になると思いますが、沖縄の大好きなホテル『ホテルムーンビーチ』のデックデザインとか。あとは絶対無理だと思いますが、エミリオプッチ 、エルメスのデックも作りたいです。

ーーー確かに、本業の方がありますのでそうですよね。でも、いつか、ホンネラボブランドがもっと世界を渡って、様々な場所で目にする機会が来れば、一人のファンとして私も大変うれしく思います!実際に、ルイ・ヴィトンやグッチが有名なキャラクターなどとコラボするのもありますし、そう無い話でもないのかもしれません・・・!

本根:そうですね、もしチャンスを頂いたとしても、どちらにせよもうしばし先にはなるとは思います。

ーーーはい!楽しみにしております。では最後に・・・本当にこれは私の興味で聞いて大変恐縮なんですが!ずばり、本根さんはカードマジックをなさいますでしょうか?(実は前から気になっていました)

本根:マジックですか・・・人前ではとても出来ないですね。身内には簡単なマジックをして場を和ませるくらいのことはしたりもします。 ただ、見るのは好きですね。カードマジックでは、アンビシャスカード(=中に入れたはずのカードが一番上にあがるマジック)が一番好きかも知れません。あのマジックは、単純なようで奥が深いですよね。

ーーーはっ!私が大好きなマジックと偶然にも一致しております!すみません、しょうもない質問にも気さくに答えて頂き、本当にありがとうございました!

本根:いえいえ、こちらこそありがとうございました。

編集後記

2回にわたり、お送りしてきた本根さんのインタビュー。最初はダメ元でご依頼をさせていただいたのですが、了承頂き、本当にありがたかったです。

こちらが用意した質問がかなり多かったので、ご迷惑かな・・・と思うところもあったのですが、すべての質問に快くお答えいただきました。めちゃくちゃ嬉しかったです。

実はこのサイトを始めた時にツイッターのアカウントも開設し、活動を始めた当初に本根さんの方からフォローを頂きました(!)ファーストインプレッションは、「ゲームクリエイターの方にフォロー頂いた!」という印象。それだけでもありがたかったのですが、プロフィールを見ていると、なんとクロノトリガーのグラフィックの方・・・!

以前の記事でも触れましたが、私はクロノ・トリガーというゲームが大好きで、その製作に携わっておられる本根さんと知った時はかなり驚きました。逆に恐縮してしまった部分もあったのですが、オリジナルでデックを作成されてると聞いて、もうこれは買わないといけないと。でもなぜか最初は尻込みしてしまい、デックケースの方を先に買いました(なんでやねん)

実際に購入したBicycleが手元に届いた時、それはそれは夢のような時間でした。そもそもBicycleのデザインが素晴らしすぎるという点と、しかもそれが自分の好きなゲームに携われた方が作られているという点。2つの要素は、自分にとってそのデックを特別なものに押し上げてくれました。

デックのカードを1枚1枚見ているうちに、「この感動と素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたい!」という想いと「この製作秘話を知りたい!」という2つの想いから、気づけば本根さんへインタビューの依頼を送っていました。

本当に、本当に本根さんのデックは素晴らしいです。 写真だけではわからない、緻密なデザインや鮮やかな配色は肉眼で見てこそ素晴らしさを実感することが出来ます。ぜひ、興味をもった皆様はご購入なさってみてください。

Bicycle Future Bar Holographic Gilded版について http://honnesan.seesaa.net/article/480428305.html

当サイトでは、これからも様々なクリエイターやマジシャンの方に取材をしていきたいと思います。逆に「ちょっと語らせてほしいから聞いて!」という方がおられましたら、ぜひメッセージください。私の方からも色んなかたに突撃させていただきます。

今後とも宜しくお願い致します