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ベトナムではトランプの扱いが日本と違った話

ベトナムではトランプの扱いが日本と違った話

カードマジックとデックが大好きな筆者が、ベトナムでトランプを入手するのに苦労した話です。

はじめに

私はカードマジックがとても好きです。

トランプ一組あれば、マジックの練習に1時間でも2時間でも時間を潰せます。 むしろその時間が幸せです。家にいて時間がある時は練習しています。 このサイトのデックレビューをすでにご覧のみなさんは感づいてる方もいるかもしれませんが、私はトランプをよく買います。

しかし、ベトナムではトランプを買う=ギャンブルをするという認識になるらしいです。 別の言い方をすると、「お金をかけていないのにトランプで遊ぶの?え、なんで?」という感じらしいです。日本とは大違いです。

修学旅行の晩にババ抜きや大富豪しますー! というのは日本独特の習慣のようらしいです。 ただ、日本も昔は同じようにトランプ=ギャンブルの認識だったらしい。 これには任天堂の功績が大きく関わっているのですけど、これはまた別の機会にご紹介します。

そんな国民性の違いから発生した悲劇を今回はご紹介します

マジックショップに行く日常

もう一度いいますが、私はカードマジックが好きです(わかったから)
トランプもよく買いに行きます(だからわかっ略)

行きつけのマジックショップがありまして、そこにトランプをよく買いに行きます。 店長には顔を覚えられ、「私が店に行く=トランプを買う」という状況のため、新商品が入荷してたりすると 「これ興味ある?」とよく聞かれます。 そして気に入ったデザインのものがあれば、私はよく購入します。 別の言い方をするならば優良顧客、ひどい言い方をすればカモなわけです。

ちなみにベトナムではAmazonのサービスは展開されていません。 でも、代わりにLazadaという似たようなECサイトがあります。 私はそこでもトランプを買うことがあります。まあいわば、「トランプ買うマン」になってます(何その何のひねりもない名前)

ある日のこと

Vanishingという有名なマジック用品のECサイトで、カードマジックの解説書(洋書)とトランプ1ダースを買いました。

実は日本にいたら、わざわざアメリカから輸入しなくても普通に買えます。 ただ、ベトナムには売ってない種類のものだったので、個人輸入することにしました。 アメリカから荷物を送ってもらうわけです。

1、2週間経って、「そろそろ着くころかな〜」っというころに配送会社から 「あなたの荷物は輸入禁止品に該当するから通関できない」 と電話がかかってきました。

( ゚д゚)エッ!!

いやいや、輸入禁止品ってなんでしょうか。 トランプって麻薬とか拳銃みたいに、公序良俗に違反するようなものではありません。 もっというと、条約に抵触するような動植物とか買ったわけでもないです。勿論、最初は全く理解できませんでした。

で、よく聞いてみると、どうやらトランプがダメらしいと。
「ギャンブルを助長するから」っていう理由とのことでした。

いやいやいや!

ベトナムでもトランプ自体は売ってますよ! とひな壇芸人が突っ込むテンションで電話越しにツッコミました。

お酒でも包丁でも何でもそうじゃないですか。

道具というものは使いようで、ましてやトランプはギャンブルの道具という偏見を感じました。 もうね、これには憤慨してしまいまして。 トランプをギャンブルの道具としか見てないベトナムのほうが問題でしょうと。 ていうか国内で売ってるのは、どういう扱いになるんですかと。

お前は俺を怒らせた

私の中の空条承太郎が目覚めました(ジョジョの奇妙な冒険Part3を参照) これは不服申立てをするのを決意しました。そう、承太郎がDIOに抱いた感情のように。 実は輸入品の受取人は、税関が下した判断に対して不服申立てをする権利があります。

勿論、ベトナムは社会主義国なので、情勢がわからないわけではありません。 日本のような、資本主義とは少しお国の勝手が違うのです。

がしかし!トランプ自体は国内で禁止じゃないのに、なんで私の買ったやつだけ禁止なのか説明はしてほしいなと。そういうわけでございますよ。

仮に100,000,000歩譲って、トランプがだめなのを受け入れるとしましょうと。 私は再び質問をしました。

「じゃあ洋書は問題ないですか?」

と。すると「問題ないです」と。
「じゃあそれだけ通関(=税関を通過させる)してもらえませんか? 」と言うと、一緒の荷物(箱)になってるからダメだと言われました。 トランプ破棄するなら本も破棄しないとダメだと。 ななななんだって・・・!!

破棄するということは、つまり、お金をドブに捨てないといけないということです。 いやいやいや、チョット待ってください。トランプ1ダースと本5冊買って、合計2万ぐらい払ってるわけです。

じゃあやっぱりトランプを通関させる戦いをしないとダメだと。 ということで、ベトナム税関に対して「来週行きますよ!」と。 「トランプとギャンブルがいかに切り離されたものであるか説明しに行こうじゃないか!」 と、心に決めたわけです。

実は配送会社も色々戦ってくれたみたいでですね。 ただ、結局どんな立て付けでも駄目だということで「手に負えない!無理!」となり、 電話してきてくれた状況だったらしいです。なるほど、それは仕方ない。

配送会社は「あなたが状況をきちんと理解できるために、とりあえず今のこの状況をメールにまとめて送ります」と言ってくれました。 「OK、ありがとう」と。なんてありがたい話なんだ。ベトナム、捨てる神いれば、拾う神もいるもんだなと思ったわけです。

・・・でも、「そのメール送るよ!」と言われてから、2日経過しても送られる気配がありませんでした。 なんでやねーん!!と、もう一度電話して、やっと無事にメールを受け取ることが出来ました。 知り合いのベトナム人に聞いたら、ベトナムあるあるらしいです。

途中経過

そして配送会社・税関と色々やりとりした結果、 日本円で5万払うんだったら通関しても良いよ!と言われあした。 「え、賄賂ですか?賄賂払わされるんですか?」と思ったら、輸入規制品を輸入する時の税金がそれだけかかるらしい。 お、おう・・・なるほど税金ときましたか・・・。なかなか高いじゃないですか・・・。

商品以上に税金払うのも・・・なんというか。そもそも5万円か・・・。 5万払うのは流石にちょっとしんどいので、そこでついに国家権力に屈することを決意しました。仕方ない。 (もし仮に払ったとしても、どちらにせよ屈することにはなってしまいますが)

仕方ないので返品しようと思い、その方法を聞きにECサイト側のカスタマーサポートにメールを送りました。

すると、
「なんとかできないか運送会社に相談してみるよ!」

と返事が。いや、パイセン・・・何度も交渉したんっですよ。した結果これなんスよ・・・。 私の質問は「返品の仕方を教えて」なのに、全くそれに対する返答がありませんでした。

この時、私は複数のサイトでトランプを購入しており、このECサイト以外でもいくつか荷物を待っている状態でした。 すると、USPCの公式サイトで注文していた方のトランプは普通に何事もなく届きました。・・・どういうことだってばよ。

後で聞くと、配送会社によって税関の審査が厳しかったり、甘かったり、当たり外れがあるとのことでした。

しばらくして・・・

いずれにせよ、受け取りは無理そうなのでキャンセル(返品)しようとしたら、今度は倉庫の保管費用を支払ってくれと言われました。 正確には教えてくれなかったんですが、それでも軽く3万円ぐらい行くと言われました。さささ、3万円・・・!?!?!?。

3万円程の商品を買って、保管料3万円・・・。 それならば最初に「保管するにもお金かかるからね」と伝えて欲しかった! そんな説明一言もなかった。後出しはずるいですよパイセン・・・。

先ほど話に出てきたECサイトのサポートの人とも相談して、結局荷物は破棄することに・・・。 あぁ〜3万円がドブに消えてしまった・・・。ベトナム怖い・・・というより配送会社怖い・・・。

もうちょっと詳しく教えてほしかった・・・。いやでも、勉強不足な僕が悪いですね。

結果的にその荷物はもう届かないので、めっちゃ高い勉強代を支払うことになってしまいました。 ただ、通関するとさらに出費がかかるので、これが損切りとしてはベストでしょうか。

・・・つらいw

店長の登場

先程触れたように、私は同時に複数のECサイトでトランプを注文していたため、 税関でストップを食らったのはこの件だけではありませんでした。もう1件、荷物があったのです。

下の画像はそのもう1件の荷物の、その時に届いた税関からの書類です。
ベトナム語で書かれていますが、輸入したかったらライセンスを見せてね、なかったらちゃんと手続きしないとダメよ、的なことが書かれています。
(プライバシーに関わる情報は隠しています)

税関通書

これもまた破棄しないといけないのか・・・。そう思っていたときです。

たまたま、通ってるマジックショップの店長に、この件の話をする機会がありました。

彼は
「え、そんなことがあったんか!それなら俺が一緒に交渉しに行ったるで!」 とまさかの提案をしてくれました(実際の会話は英語なので関西弁ではないです)

あなたが神か・・・! 当時の自分には彼がそんなふうに見えていました。

休日は税関もお休みなので、平日に空港の直ぐそばにあるEMSの事務所に向かいました。 ベトナムはバイク大国なので、店長のバイクの後ろに乗って二人乗りで向かいます。
(ちなみにEMSとは「国際スピード郵便」のことを指します。ようは国際便の郵便局みたいなところです。)

EMS事務所に着いたら、「税金と荷物の保管料合わせてスゴい請求額が飛んできましたけど、なんでですか??」 と質問を入れるところからしようという想定をしていましたが、一緒に行ってくれた店長が
「ここは俺に任せて」 と言い、税関の交渉に臨んでくれました。

店長、ホンマに神様に見えたよ・・・。

税関の対応

税関の職員は中年の女性でした。

最初は 「いやー個人でこういうの輸入されるとやっぱりお金かかるんですよね〜」 という感じでした。

しかし、店長が「そもそも俺輸入のライセンス持ってる(マジックショップやってる)から大丈夫やろ?」とジャブを打ってくれました。

その後、僕を指さして 「彼は日本人のカードマジシャンなんだ。だからギャンブルをする心配はないよ」と説明しました。

いや・・・まあ・・・マジシャンは本業ではないけども・・・。と思いながらも、 「ギャンブル目的ではない」という説明をしようと思ったら、その説明のほうが良いかも? とも思い始めるように。

・・・そうなるとある程度予想はしていましたが、まさかの展開が起こるわけです。

「へぇ〜そうなんですか。じゃあ、今目の前で何かマジックしてくださいよ」

無茶振りがきました。
だがしかし!トランプを毎日、常に肌見放さず持ち歩いている私は何も問題ない!

「よーし!やりましょうか!!」

と息巻いて「デックの真ん中に入れたカードが上に上がってくる」という所謂「アンビシャスカード」というマジックすることに。 しかし、カードを中に入れて「今から上げますよ!!」というタイミングで

「OK!あなたがマジシャンなのはもうわかった、もういいよ」とSTOPがかかりました。

いやいや!まだ不思議な現象起きてませんよ!今から指パッチンして、一番上に上がるんですよ!!!

カードを中に入れただけなのに・・・ここまで来たらちゃんと演じたいな・・・・。でも、まあ良いか。 相手はOKって言ってるし・・・。本当にマジック見せようとしたからそれで大丈夫やろうってなったんでしょうかね! よし、とりあえずOK!

奇跡

この一連の流れで、カードマジックに使うためのトランプというのは信じてもらえました。 良かった良かったと思っていると、さらに追い風になる出来事が起こります。

なんと、その税関の職員とマジックショップの店長に共通の知り合いが居たんです。 Facebookの写真を見せながら、「あぁ〜!この人知ってるの!?」ってめっちゃもりあがってますやん・・・! 両方共ツレなんですかい!!これは何という奇跡でしょうか。

と思ってると、直後に2つ目の奇跡が起きます。

税関の職員の息子さんが実はマジックにハマってるらしく、彼がマジックショップの店長だということがわかると 「え、お店どこにあるの!?今度行くわ!ちょ、連絡先交換しましょ」 と、Zaloという日本で言うLINEに当たるベトナムのメッセージアプリで連絡先を交換し始めました。

この時点でもう税関職員の顔はホクホクしておるわけです。

マジックへの理解がある職員だったのと、店長の人脈のおかげで、無事に「荷物受け取っていいよ!」となりました。 (ただし、結局保管料と税金はかかってしまうため、1万円だけは払うことにはなってしまいました。勉強代にします)

この1件で、店長には頭が上がらなくなりました。本当に感謝です!!
これからも、トランプはあなたのお店に買いに行きます!

後日談

後日、お礼に日本酒とか日本のお菓子とか色々持って行ったらめちゃくちゃ喜んでくれました。
こっちのほうが喜んでいるのよ!!

感謝の気持ちをもっと店長に伝えたい!と思い、
以前店長がテンヨー(日本の手品グッズメーカー)と直接取引をしたいと思っていると言っていた話を思い出しました。 それを自分が代わりに仲介しようと思い、「ベトナムに販路広げてくれませんか?」というメールをテンヨーさんに送りました。 (これがなんとテンヨーさんから返信が返ってきたのです。またこの件は別で触れます)

そんなドラマチックな日々がありました。

ベトナムに住みながら、トランプを輸入する時は皆様ご注意くださいませ。
(他にそんな方がいらっしゃるかわかりませんがw)